■背景にある「ゴーストギア」問題
海洋プラスチックごみは、最も急速に悪化している国際的な環境問題の一つです。海洋に流出しているプラスチックは、推定で年間1,100万トンと言われ、なかでもウミガメや海鳥といった生物に深刻な被害を与えているのが「ゴーストギア」、つまり海に流出した漁網やロープ、釣り糸などの漁具です。そのほとんどは、プラスチックでできており、年間50万~115万トンと推定されています。
■気仙沼市との協働でゴーストギアの発生予防
本プロジェクトは、この問題の解決策の一つとして、WWFジャパンがいつくかの水産都市の自治体と漁協など地域の協力を得て「ゴーストギア」の発生予防に取り組むものです。今回プロジェクトを開始するのは宮城県気仙沼市です。2019年に「気仙沼市海洋プラスチックごみ対策アクション宣言」を制定し、海洋プラスチックごみゼロを目指し、海岸清掃、海中ごみの回収、海ごみ回収ステーションの設置など、積極的な対策を行なっています。
海洋プラスチックごみ問題に先進的に取り組む気仙沼市に対し、かねてより同市教育委員会と教職員向けESD(持続可能な開発ための教育)研修を行なっていた繋がりから、WWFジャパンより漁網回収・リサイクルの協働について、気仙沼市に提案。そして、漁協を通じて、まずサケ刺し網などを対象に、回収を開始することになりました。使用済みになった漁網を無償で回収することで、漁業者の経済的負担を軽減しつつ、漁具の管理に対する意識を高め、ゴーストギアの発生を予防します。
使用済み漁網の回収とリサイクルは、米国のリサイクル専門会社、テラサイクルジャパン合同会社が、マテリアルリサイクルを行ない、再生プラスチック原料としたうえで、スポンサー企業の協力を得て製品化を行なう予定です。
■新たな海洋教育プログラムを通じて地域コミュニティ全体で応援
使用済み漁網の回収は、海洋プラスチックごみの発生を抑制し、気仙沼市の主要産業である漁業を持続可能にすることで、地域コミュニティの持続性にもつながります。そこで気仙沼市教育委員会と般社団法人3710lab(みなとラボ)との連携によって、新たな海洋教育カリキュラムを開発。漁業者の漁具管理、役目の終わった漁具の回収・リサイクルの取り組みを題材の一つとして取り上げ、2022年度中に展開する予定です。
このように子どもたちの学習を通じて、漁網の資源循環と持続可能な漁業に取り組む漁業者をそこに暮らす市民が応援し、「漁網のみらい」について考えます。使用済みの漁網が海に流出して「ゴーストギア」となることなく、美しい海が次世代につながっていく、そんな未来を目指します。
WWFジャパンでは、今後、他の水産都市の自治体にも、本プロジェクトへの参画と協働を拡げていきます。
●「地域と一緒に!漁網のみらいプロジェクト」について
https://www.wwf.or.jp/campaign/gyomo-mirai/
「地域と一緒に!漁網のみらいプロジェクト」は、使用済み漁網の回収・リサイクルを通じて漁業者による漁具の管理を促すプロジェクトです。漁網の資源循環と持続可能な漁業に取り組む漁業者を、そこに暮らす市民が応援し「漁網のみらい」について考えます。使用済みの漁網が海に流出して「ゴーストギア」となることなく、美しい海が次世代につながっていく、そんな未来を目指します。
●「気仙沼市海洋プラスチックごみ対策アクション宣言」および「海洋プラスチックごみ対策アクションプラン」について
https://www.kesennuma.miyagi.jp/sec/s028/020/010/010/040/050/20190904151412.html
東日本大震災で壊滅的被害を受けた宮城県気仙沼市は、「海と生きる」を掲げ、地域の復興とともに、持続可能な未来に向けて取り組んでいます。2019年に制定した「気仙沼市海洋プラスチックごみ対策アクション宣言」の下、海洋プラスチックごみゼロを目指し、海岸清掃、海中ごみの回収、海ごみ回収ステーションの設置など、積極的な対策を行なっています。
●気仙沼市の海洋教育について
https://www.kesennuma.miyagi.jp/edu/s162/kaiyouedu.html
水産業を基幹産業とする「海と生きる」まち、気仙沼市では、子どもたちが海と地域とのかかわりに触れ、考えることが可能な、多彩なカリキュラムが実施されてきました。2022年現在、公立の幼稚園と小・中・高等学校の多くがESDの推進拠点となるユネスコスクールに加盟するとともに、海を通して・海について学ぶ「海洋教育」に取り組んでいます。
●一般社団法人3710lab(みなとラボ)について https://3710lab.com/
「海・学び・ヒト」をテーマに、「学び」のアイデアや新しい時代の教育のあり方を考えるためのプラットフォームです。学校の教育現場や地域社会、市民活動において、海や学びにまつわる様々な情報を集約し、その学びに秘められた「大人たちが子どもたちのために残したい、守りたい、伝えたい、と思う海にまつわるストーリー」を実践的なワークショップを中心としたイベントやウェブメディアを通してお届けしています。
●WWFについて https://www.wwf.or.jp
WWFは100カ国以上で活動している環境保全団体で、1961年にスイスで設立されました。
人と自然が調和して生きられる未来をめざして、サステナブルな社会の実現を推し進めています。特に、失われつつある生物多様性の豊かさの回復や、地球温暖化防止のための脱炭素社会の実現に 向けた活動を行なっています。
●関連情報
・ゴーストギア発生予防対策・地域プロジェクト
https://www.wwf.or.jp/activities/basicinfo/5041.html
・深刻な海洋プラスチック問題の原因「ゴーストギア」を無くそう!
https://www.wwf.or.jp/activities/basicinfo/4452.html
■パネル展も6月5日まで同時開催!
本プロジェクトを紹介するパネル展(主催:WWFジャパン、共催:気仙沼市、5/30~6/5 9:00-17:00、@気仙沼市まち・ひと・しごと交流プラザ)を開催中です。5/30は11:00開場、最終日は15:00閉場です。
詳細は
https://www.wwf.or.jp/event/organize/5040.html
■リサイクルプラスチックの製品化におけるスポンサー候補を募集
WWFジャパンとテラサイクルでは、ゴーストギアを減らしていく取り組みに賛同し、本プロジェクトにご協力いただけるスポンサー候補を募集しています。詳細は、WWFジャパン水産海洋グループ fish@wwf.or.jpまで。ご連絡をお待ちしています。
助成:日本財団 海と日本PROJECT
https://uminohi.jp/
さまざまなかたちで日本人の暮らしを支え、時に心の安らぎやワクワク、ひらめきを与えてくれる海。そんな海で進行している環境の悪化などの現状を、子どもたちをはじめ全国の人が「自分ごと」としてとらえ、海を未来へ引き継ぐアクションの輪を広げていくため、オールジャパンで推進するプロジェクトです。
【速報】「地域と一緒に!漁網のみらいプロジェクト」進水式を開催