パン好きたちを虜にしているトースト一枚焼きの高級オーブン。高級食パンならずとも、お手頃な食パンでも耳までふんわりしっとり仕上げてくれるというそれは、四角い形状もあいまって玉手箱のよう。少し前のことになるけど、新カラー発売に先駆けたお披露目会にお出かけし、料理研究家が考案した食パンメニューとお酒のペアリング「パン飲み」体験を楽しませてもらった。
ビールやワインに合う一品として料理家が提案してくれたのは、乾燥桜えびを使ったチーズトースト。レシピを説明しながらの実演が始まり、「使い切れなくてちょっとだけ残っている桜えびを……」と聞いた瞬間、わたしは心の中で叫んだ。
「ある! ウチにもある! 本当にちょっとだけ残った乾燥桜えびが、冷蔵庫の引き出しポケットの奥で眠っている!」。
思えば、いつぞやにお好み焼きをして以来、庫内に放置したままで、「お願い、私を見つけて!」という桜えびの声はわたしには聞こえなかった。今まで忘れていてごめんよ、えびちゃん。家主がその存在に気づいたときには賞味期限はとうに過ぎていて、口に入れていいのかどうかの判断に迷い、もう捨てるしかなくなって、申し訳ないけどゴミ箱行きだ。これは紛れもなくフードロス罪だ。自供すれば前科は数え切れない。
罪深き家主のフードロスは、ニュースなどで見聞きするそれとはケタ違いのプチロスなんだけど、ほんの小さなフードロスを回避させてくれた料理家のひと言はまさに鶴の一声! ちなみにトースト一枚に使う桜えびは3g足らず。さっそくわたしは試食会同様に、ビールと一緒に桜えびを使ったトーストを満足げに味わい、家庭内フードロス撲滅運動をスタートしたのでした。