ソトコト広報室

宇宙からのリモートセンシング×ドローン×画像解析AIが農業の未来を変える。「地球の見える化」で農作物の病虫害リスクを発見する取り組みとは。

2021.12.02


衛星測位システム「みちびき」によるリモートセンシング×ドローン×画像解析AIで、農業の効率化を目指すファンリード。マレーシアにおいて実証実験に取り組んでおり、衛星から得られるハイパースペクトル画像から病虫害リスクを見える化すべく、Archaic(アルカイック)社とコラボレーションをしています。今回は民間による衛星データ活用や宇宙用AIの可能性について、株式会社ファンリード 取締役 兼 CTOの保延 憲一さんと株式会社Archaic 代表取締役CEOの横山 淳さんに話をお聞きしました。

みちびき(衛星)を利用したリモートセンシングとは

ソトコトNEWS ファンリードとArchaicが一緒になって取り組んでいることを教えてください。


保延憲一(以下、保延) 内閣府などから公募されていた「2019年度みちびき(衛星測位システム)を利用した実証実験」に当社が採択されたことからスタートしたプロジェクトです。具体的には、衛星測位システムとドローン観測システムを活用し、マレーシアのパーム椰子(やし)農園の病虫害リスクの早期発見に貢献する取り組みとなっています。

パーム椰子(やし)農園の病虫害と聞くとセンサーを利用して簡単に見つかりそうに思うかもしれませんが、そうではなく、大量のセンサーデータの複雑な処理が必要であり、さらに今後、病気を予測するとなると、データサイエンスやAIが必要になることが判明したため、専門家であるArchaicの横山さんにお声がけしたのです。

衛星などの遠隔から電波や光、スペクトルを受信して、離れたところから、その状況を知ることができるリモートセンシングとそのデータ分析は表裏一体の関係です。そこで横山さんと一体となり、本実証実験に取り組んでいるところです。

横山 淳(以下、横山) Archaicとしては、これまで手掛けたことのない分野に関わる時が、もっともクリエイティブになれる瞬間です。個人的にも長らくサイエンスに携わっていますし、Archaicのエンジニアたちもサイエンティフィックな分野に興味がありますので、このお話をお引き受けすることにしました。

光を波長ごとに分光して撮影するハイパースペクトルカメラは通常の画像処理とは異なる分野です。また、Archaicではこれまでさまざまなことを手がけてきており、データの取り扱いという点では長けています。私たちの知見を活かし、少しでも宇宙関連事業に貢献できるといいなと思いご一緒させていただいています。


保延 ドローンにも衛星にもセンサーを搭載して、マクロ的には衛星でリモートセンシングしつつ、ミクロ的にはドローンで観測していきます。地上にも人口統計や土地情報など様々なデータがたくさんありますので、この3つを複合的に取り扱って、最終的に“見える化”して1つのサービスにつなげていくわけです。これを、AI基盤も含めて、横山さんと一緒にインターネット上で実現しようとしているところです。

宇宙からセンシングするアグリテックに必要な技術とは?


ソトコトNEWS パーム椰子の農園は広大です。人工衛星で撮影された画像を見ておかしいと感じたらドローンが飛んでいき、細かいところを確認するというイメージでしょうか。このようなアグリテックにはどんな技術が必要ですか?


保延 必要となる技術はいくつかあり、代表的なのはセンシング技術ともう一つ、SLAM(Simultaneous Localization and Mapping)技術です。自己位置特定と地図作成を同時に行うSLAM技術を活用し、飛行しているドローンの自己位置を推定しながら周囲の環境地図を作成していきます。その環境地図を作成するために、ファンリードでは独自のアルゴリズムを開発しています。


ソトコトNEWS マレーシアのパーム椰子農園だけでなく、ASEAN(東南アジア諸国連合)の熱帯雨林や極東ロシアに広がる樹林などについてはいかがですか?


保延 ASEANにもDX(デジタルトランスフォーメーション)は広がっています。そこで本プロジェクトでは特にASEANをメインに考えています。もし農作物が病虫害にやられている箇所があれば早く対処しなくてはいけません。このあたりはデータ解析のスピードによりますので横山さんの出番だと考えています。


横山 衛星を使って異常検知をしていく仕組みがすごく重要で、衛星によるマクロデータと、ミクロにあたるドローンやローカルのセンサーで見た結果を教師データ(※1)にしていきます。その両方をセットにして学習したモデルを持っていると、片方がなくても双方でお互い共有し予測し合えるようになります。


※1 教師データとは、機械学習で学習に用いるデータセットのうち、「例題」と対応する「正解」という形式に整理されたデータのこと。

ハイパースペクトル画像を分析してAIが病気を予測する


ソトコトNEWS パーム椰子農園も含めて、現在のフェーズはどのあたりでしょうか?


保延 現在、マレーシアのパーム椰子農園では実証実験のフェーズに入っているのですが、コロナ禍により現地では動けません。そこで、SLAM技術やハイパースペクトルカメラなどの技術をブラッシュアップしているところです。


ソトコトNEWS ハイパースペクトルカメラで撮影した画像ではどのようなことがわかるのでしょうか?

保延 可視光の波長バンドは360ナノメートルから830ナノメートルにわたっています。しかし、一般的なカメラだとRGB(レッド、グリーン、ブルー)の3バンドの波長しか見ることができません。ところがハイパースペクトルカメラだと、200バンド、300バンドの範囲で光の波長を見ることができます。

それでどうしてパーム椰子の病虫害が分かるかというと、人が弱ってくると顔色が悪くなるのと同じで、植物も弱ってくると色が変わってきます。具体的に言えば、近赤外の波長帯で反射率が悪くなってきます。しかしそのバンドのスペクトルは肉眼や一般的なカメラでは感知できません。そこで、ハイパースペクトル画像でパーム椰子の病虫害スペクトルをいち早く検知することで、病気の早期発見につながるというわけです。



ソトコトNEWS 衛星リモートセンシングで農家の課題をどのように解決していきますか?


保延 世界的に農業人口が減っているという問題があるために、農業の効率化をより進めていかなければなりません。このような環境下で農業を応援していくためには、例えば、高付加価値の農作物を育てていくことが重要です。マレーシアでいえば、高級パイナップルやドリアンなどの果物が高付加価値ですね。

ハイパースペクトル画像では病気だけでなく農作物の生育状況もわかりますので、「生育が悪いパイナップルの木の周辺に肥料を多めにあげ均一に収穫できるようにする」といったことにも活用できると考えています。


ソトコトNEWS 衛星リモートセンシングにより、広大な農地でも管理が楽になりますね。


保延 そうですね。それをどう見える化していくかを横山さんと一緒に試みているところです。


横山 病虫害を抱えている農作物でも、人が見えるRGBの画像領域では同じに見えてしまいます。しかしハイパースペクトルカメラであれば、RGB以外の波長バンドも映し出すことができます。1つ1つの波長を見てエンジニアがAIモデルを作成するといった細かい作業により、農作物の病虫害の状況が見える化するわけです。


ソトコトNEWS ハイパースペクトルカメラで撮影した波長データと、リアルに見えている映像を符合しながら、農作物の生育状況や傷みの程度がわかるということですね。


横山 そうですね。衛星画像とローカルなセンサーは相性が良いのです。AIには機械学習のモデルとしての教師データを作成するアノテーション(※2)の問題があります。進んでいる分野では自動で教師データが蓄積していく仕組みを持っているのですが、衛星画像とローカルなセンサーの関係性でも同じ仕組みを使うことができます。そのため、リーズナブルに良いスキームを作ることができます。

※2 アノテーションとは、あるデータに対して関連する情報(メタデータ)を注釈として付与すること。AI業界では、機械学習のモデルに学習させるための教師データ(正解データ、ラベル)を作成することを指す。


保延 今、衛星データはオープンフリーになってきており、膨大なアーカイブデータを活用することができます。ファンリードには衛星データ活用のスペシャリストがいますので、どういったデータをどこでどういう形で取得できるのかについてもよく知っています。そこで、集めた衛星データを横山さんに渡し、データ解析を行っていただいたり教師データを作成してもらったりしています。
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