基調講演 「暗号資産・ブロックチェーンとESG」
大槻 奈那(おおつき なな)氏
マネックス証券株式会社 専門役員 / マネックス仮想通貨研究所 所長
名古屋商科大学大学院 教授
外資系証券会社等を経て2016年1月よりマネックス証券チーフ・アナリスト。国内外の金融市場や海外の株式市場等を分析する。2018年よりマネックス仮想通貨研究所所長を兼務、暗号資産を主に金融市場の立場から分析する。政府の委員やロンドン証券取引所の日本業務のアドバイザーなども務める。
マネックス証券株式会社:https://www.monexgroup.jp/jp/index.html
マネックスは2018年に仮想通貨の研究を始めて、金融の市場から見た暗号資産について分析をしています。
昨今、エネルギー消費に焦点が集まり、暗号資産はESGフレンドリーではないという見方がされています。しかし、暗号資産の出自は「ESGの世の中を実現する」という考え方から始まっています。
現代の決済サービスでは、国際的な決済をする場合、大手の金融機関からエンドユーザーにコストが課せられています。そのコストは年間数兆円に上ります。小規模取引はコスト割れしてしまうため、旧来の決済では小口の決済を受け入れていません。
また、金融機関が自らのコストと、リスクを排除するために、顧客から必要以上の情報を要求しています。このことは、ベンチャーなどを起こす人にとって負担となっています。
世界的には、17億人が銀行口座をもっていないという事実があります。
不正とコストを抑えた取引が暗号資産で可能になれば、広くあまねく多くの人に金融サービスを提供することが可能になり、効率的で公平な社会が実現するだろう、これが暗号資産の元々の発想でした。
現在、暗号資産は、マーケットとして高く注目されてしまったところから、「投機」の対象になってしまっています。
急速な広がりのために、ESGという観点から極めて薄まってしまい、目的が理解されづらくなっています。
しかしながら、市場の関係者の見方では、暗号資産は拡大の好機にきていると言われています。先進国だとインフレ、途上国だと自国の通貨の信頼感が低いため、暗号資産を持っている方がよいのではという考えが広がっています。