浜田 実は「自宅ではスピーカーで楽しむ」と言い続けているのにはもうひとつ理由があって、イヤホンやヘッドホンを使用しすぎている、あるいは大きすぎる音量で聴いていると、難聴になるリスクが高くなるという研究結果がWHO(世界保健機構)からも出ているからです。「ヘッドホン難聴」や「イヤホン難聴」と呼ばれるもので、音を伝える役割をしている有毛細胞が徐々に壊れてしまうことで難聴になってしまうのです。一度難聴になってしまうと二度と治りません。そうならないためには、ヘッドホンやイヤホンでは大きすぎる音量で聴かない、長時間の使用を避けることなどがポイントになるのですが、外出時はスマホや携帯音楽プレーヤーを使ってヘッドホンやイヤホンで聴くことになると思いますので、せめて家ではスピーカーで聴いてほしいのです。
特に若い人たちは、「スマホで音楽を聴く=ヘッドホン・イヤホンで聴く」という固定観念があると思いますので、スマホとスピーカーをBluetoothでつないで、手軽にスピーカーから聴いてほしいです。もちろん、カラダ全体で聴いてほしいですね。好きな音楽がもっと好きになると思いますよ。
WHO
1.1-billion-people-at-risk-of-hearing-loss
https://www.who.int/vietnam/news/detail/10-03-2015-
筆者 日本の住環境を考えると、隣近所と距離のある一軒家であればスピーカーを使えますが、都心のマンションやアパートでは「大音量」では使いにくいと思うのですが
浜田 スピーカーでいい音を鳴らす、というと、どうしても「大音量」をイメージしますよね。確かにハイレゾを大音量で鳴らすのも楽しみ方のひとつではありますが、私がお勧めしたい楽しみ方は、「小さな音量で楽しむ」ことなのです。
筆者 大きな音でなく、小さな音でもハイレゾを体験できるということですか?
浜田 私がハイレゾの楽しみ方として提案したいのが、「ニアフィールド(Near Field)」という聴き方です。2つのスピーカーを自分の近くに配置し、スピーカーと自分との3点を結んでフィールドを作ります。そしてハイレゾの音楽をスピーカーから小さな音量で聴いてみてください。音の解像度が高いので驚くほどいい音で聴くことができますし、音の奥行きも感じられますよ。
お勧めは、寝る前に自分の好きな音楽(できれば落ち着ける、リズムが激しくないもの)をニアフィールドで聴いてみてください。とてもリラックスできますよ。
筆者 ハイレゾは、日本の住環境で音楽を楽しむのに最適とも言えますね。Bluetooth接続以外にも、テレビとは光デジタルケーブルで接続できるそうですが、テレビに接続して使用すると、何か変わりますか?
浜田 もちろん、楽しみが100倍変わりますよ(笑)。これまた不思議なもので、「音がよくなると映像もきれいに見える」のです。もしかしたら気のせいなのかもしれませんし、私だけなのかもしれませんので、あくまでも個人の意見ですが(笑)、脳の中で画と音の神経がつながって相乗効果があるような気がします。
「音なしの映画は泣けない」という意見もあるように、映画は音質が変わると得られる楽しみが変わります。映画館では大きなスクリーンだけでなく、素晴らしい音響設備によっていい音を体験できます。自宅でも同様に、音にこだわって映画を見てほしい。最近のテレビは画質が素晴らしくきれいですし、4K放送やブルーレイなどもあるので、映像だけでなく音質も一昔前とは違います。ですからたとえ放送波自体がハイレゾ音源でなくてもテレビにハイレゾ対応スピーカーを接続するだけで音が変わりますから、映画館に負けないレベルで映画を楽しむことができます。もちろん、ニアフィールドで小さな音量で見ることもお勧めですよ。
筆者 映画はアクションものからラブロマンスものまで楽しめそうですね。それ以外でも変化はありますか?
浜田 スポーツ番組や音楽番組もガラッと変わりますよ。大げさに聞こえるかもしれませんが、「臨場感」が変化します。
スポーツは無観客や入場制限のために、「観客がいなくて声援がないから盛り上がらない」という意見もありますが、ハイレゾ対応スピーカーを使えばきめ細やかな音が聞こえるので、普段は聞こえない選手の声や打撃音などが聞こえます。いつもとは違った「臨場感」のようなものが体験できます。
ちなみにサッカーの「ユーロ2020」では、6万人以上の観客を入れて開催した試合もありましたが、これはこれで大迫力。スタンドから観ているような臨場感だったという感想をもらっています。
筆者 音楽番組はどうですか?
浜田 ブルーレイのライブディスクはぜひ体験してほしいですね。これはもう言うまでもありません(笑)
筆者 コロナ禍によって、自宅で過ごす時間が増えました。ハイレゾ対応スピーカーによって「おうち時間」が楽しくなりそうですね
浜田 映画でもスポーツでも音楽でも、本来であれば「ライブ」が一番いいものです。映画であれば映画館、スポーツは試合会場、音楽はライブ会場と、現場で観るのが一番盛り上がりますし、感動します。また、気心の知れた人と一緒に行くことで、楽しみや感動は増しますし、いい思い出にもなります。
しかし、新型コロナ感染症によって、それが自由にできなくなってしまいました。だったら、できるだけ「ライブ」に近い状態を自宅でも体験できないかと考えたときに、その重要なポイントが「音」にあるのではないでしょうか。ハイレゾ対応スピーカーをテレビに接続し、映画やスポーツを楽しむ。手軽に音楽が聴きたいときにはBluetoothで接続すれば、スマホやパソコンに入っている音楽を再生できる。そして「いい音」をカラダ全体で体験することで、このような世の中であったとしても、生活を楽しくできるのではないでしょうか。